#1 The Winds
 
 
 
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   ぼくたちはいつも、きもちのいいふかふかのなかをいきていました。
そらがとんでいくなかを、ぼくたちはいつも、ういていたのでした。


かさかさと、藁半紙のかすれる音が、前から後ろへと、響いていく。
やがてその音が一斉に消えると、
その藁半紙の上に、シャープペンシルを打ち付ける音が、あちこちに聞こえ始める。
それを見届けると先生が、さっきのように話しはじめた。
「…これから、この白紙の上に、先生の出す問題の答えを、書いてもらいます。」
生徒としては、一番嫌いな形式の試験だ。
中には、物好きな馬鹿もいるけど。
このときばかりは、クラスで一致団結し、非難の声を先生に浴びせる。
これにはたまらず先生も怖気づいたかと思ったが、逆に調子付いていた。
「まったく、去年の奴らはなぁ、こんな問題出ても一言も言わなかったんだぞ!
大体、今年は出来の悪い奴らがいすぎる!」
延々と、続きそうだ。
また始まったよと、全員がため息を洩らす。
そんな中、周りに起こっていることなどつゆ知らず、
少年は黙々と、配られた紙をいじっている。
窓際の最後列、そこに少年が座っていた。
少年の手によって、ゆっくりと、丁寧に、藁半紙は、縦に折られる。
ガサガサ音がしてるのが、周りに聞こえるくらいに目立ってはいるが、
周りの奴らは、そんな少年を見ても、あ、やっぱり優介(ゆうすけ)か、とつまらなそな顔で再び前を向いていってしまった。
やがて藁半紙は、綺麗な紙飛行機にされていた。
その時ふと、少年の横で、カーテンがなびいた。
窓が、少し開いているのだ。
少年はそれを、いっそう大きく開け放った。
そこから入る冷たい風が、教室中を駆け巡る。
「へっくし!」
少年の一個前に座っていた奴に、一番被害が及ぶ。
少年はそいつに、手を立てて謝った。
「しょうがねえなぁ、いつも…」
そいつが許してくれたところで、少年は気を取り直す。
やがて少年が照準を合わせるような手つきになる。
そして、飛行機の先っぽは、開いた窓枠の向こう、銀色の青空に向けられている。
先生は相変わらず、気付かずに一人で思い出話をしているようだった。
少年は飛行機を後ろに振りかざして、それから手を前に勢いよく突き出す。
ほとんど誰にも気付かれずに、
放たれた紙飛行機は、窓枠を通過すると同時に、上空で暴れまわる風に捕まえられた。
瞬間、先生の声が急速に遠のく。
僅かに帯びていた教室のにおいも、空のにおいにかき消され、
体に帯びていた教室の温もりも、今やその風に全て洗われて、消えてしまった。
そして、窓から、カーテンを閉める音が聞こえてきたとき。
びゅぅっと、一際大きな風が横から襲い掛かってきて、
機体はバランスを崩して、一回転、ニ回転、
そして、気が付けば校舎よりも高く、そして、建物の届かない、大空の上にいた。
風は下手くそな協奏曲のように、低い音、そして高い音、
沢山の音が交じり合って、そして、雲は絶え間なく流されていた。
時々、小さな雲が、自分の目の前をかすめ、そして、消える。
どこに流されているのかなんて、もうどうでもいい。
下なんて見たって、降りてくる時には、もっと下流まで流されるに決まってる。
風が、自分を流してくれる。
だから、自分が、流れる事に気を留める必要はない。
こんな所まで来ても、まだ、空は残っていた。
それでも、自分はもう、これ以上高くは飛べない。
だからこそ、自分の頭上を飛び交う風の音が聞こえるたびに、
羨ましくなってくる。
あんなにも、風を感じれる場所なんてない。
それなのに自分はそのわずか下で、ただ音だけを聞いているのだ。
教えて欲しかった
流される事を気にしないと、心に決めておきながら。
それでも、意地悪なら、教えて欲しかった
これから、何処に向かうのか。
そこはこの空の景色と、代わり映えしないのだろうか、
それとも、なんらかの、変化があるのだろうか。

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Now you want to take other page,
Prepare for it off the Flame Function.
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